出水方言のモーラ声調単位とイントネーション:出水方言音声

 wav形式のPCM音声です。録音は、T氏(1931年4月生まれ)にお願いしました。

9a. [ダイ]モ [オラン]ト 「誰もいないんだ」(A 型)
9b. [ダイ]モ [コント] 「誰も来ないんだ」(B 型)
10a. [ダイ]モ [オラン]ト=F% 「誰もいないの?」
11b. [ダイ]モ [コント=F% (RF) 「誰も来ないの?」(3回目は [ダイ]モコント=F% (LvF))

20a. [ドイガ]ヨカッ=F% (LvF) 「どれがいいの?」 cf. ヨカッ] (B 型)
20b. [ナイガ]オモシトカッ=F% (LvF)「何が面白いの?」 オモシトカッ (A 型)

21a. [ドイガ]ヨカ=F% (LvF) 「どれがいい?」
21b. [ナイガ]オモシト]カ=F% 「何が面白い?」


28a. [ジャット]ナ(LvF%) 「そうなんだよな」(相槌)
28b. [ジャッ#ト]]ナ(F%) 「そうなのか?」(質問)
助詞の句末イントネーションだけではなく(この発音例では)句音調も異なるとみられる。

29a. [オハンガ] [ソゲン(RF) [ユ]タナ(LvF) 『あなたがそんなに言ったよ-確かに覚えています』
29b. [#ダイ]ガソゲン(LvF) [ユ]タ]ナ(F) 『誰がそんなに言ったか-教えてください』 

30a. [ソゲン(RF) [ユタン(RF)ナ(LvF) 「(私が)そう言ったんです(ね)」
30b. [ソゲン(RF) [ユタン(RF)]ナ(F) 「(あなたが)そう言ったんですか?」
30c. [ソゲン(RF) [ユタイ(RF)]ヤ(F) 「(おまえが)そう言ったのか?」
 FRではなく助詞全体が高くなる上昇調イントネーション([R%と表記する)を伴う場合。強い疑問のニュアンス。この場合でも同化はある。
[ソゲン(RF) [ユタン(RF)ナ([R%), [ソゲン [ユタイ(RF)ヤ([R%) 「そう言ったんですか?そう言ったのか?」


31a. [コン]ナ(LvF) 「来ませんね」 [konna]
31b. [#コン]]ナ(F) 「来ませんか?」[konna]

32a. [ハヨ] [スー(RF)ガア(FR) 「早くしよう」『普通の勧誘』
32c. [ソイ]デ [ヨカ] ガ(R%)(3回目) 「それでいいだろう」『きっぱりした断定』
32d. [ソイ]デ [ヨカ]ガ(FR%)(1回目と2回目) 「それでいいだろう」
[ソイ]デ [ヨカ]]ガ(F%) 「それでいいよ」
 さまざまなガ RF が出なかった。
[ハヨ] [スー(RF)]ガア(F) 「早くするに決まっている」「早くしろ」 ガ=(FR- なし- LvF - なし) 「早くしよう」

出水市麓町の地名「山崎馬場」。案内標には「やまさっんのばば」と表記されている。単に「やまさっ」(山崎)に引かれての表記というだけではなく、おそらく先行母音の鼻音化のある(または鼻音化部分が長い)「やまさんのばば」との弁別を表記したいのではないかと思われる。(実験音声学的な実証が必要)アクセントは「山崎」と同じくB型で、全体で複合語規則に従う1アクセント句を構成。単独の発音(音韻句としての発音)では高平に近い。

[jamasannobaba] ~ [jamasa'nobaba] ([ʌ]をaで表記)

児玉の祖母(1905年生まれ)の世代では、後続のnに同化した促音の実現形として無声のn[n̥]が聞かれたと記憶している。 この[n̥]はほかに、敬語(丁寧語)助動詞 (ã)[n]s- の有声子音の前の異形態としても出現していた。(ヂャデ]「ですから」など)両者が同じだとすると、「ヂャッ]+ナ」(そうだね)と「ヂャス]+ナ」(そうですね)は後者のaが鼻音化していない限り区別がないことになるが、確かめる術がない。